難民支援と経済

次回以降、一方で地中海の難民の動きを取り上げ、そして経済の動き方を示す事例の一つとして移動通信システム、つまり携帯電話産業を取り上げていきたいと思っている。

詳しいことは今後見ていくのであるが、金額面で見ると、国連高等難民弁務官事務所(UNHCR)の2019年度の年間予算約86億ドル(108円/ドルで換算して9,288億円、以下同)に対し、寄付をはじめとする収入総額は48億ドル(5,184億円)にとどまり、38億ドル(4,104億円)、率にして約44%の不足が生じた。(以下のUNHCRのURLより)

https://reporting.unhcr.org/sites/default/files/gr2019/pdf/GR2019_English_Full_lowres.pdf

因みに、前年の2018年度においても、率にしてほぼ同じ43%の不足が生じている。

https://reporting.unhcr.org/sites/default/files/Global%20Funding%20Overview%2031%20December%202018.pdf

難民支援に必要とされる資金がこのように不足している一方で、携帯電話産業の5Gをはじめとする成長産業には潤沢に資金が投入される。この両者を並べてすぐに気付くことがある。ヒト、モノ、カネがあまりに不均衡に経済に投入されているのだ。

であれば、不急の経済活動を中断して、そこに投入されているヒト、モノ、カネを難民支援に振り向ければ、いいのではないか。一見何の関係もないように見える両者であるが、こういう形で関係があるのである。

このことに気付いたとしても、それだけでは事態は動かない。鍵となるのは、こういう思いに至る人がどれくらいいるかである。人口の過半数を大きく上回るくらいの人々が同じ思いを抱くようになれば、問題解決に向けて動き始めるであろう。

水に溺れている人がいれば、何とかして助けようとするであろう。我々に求められているのは、そういう思いを難民の方々に対しても向けていこうということ、それだけのことなのである。

言い方を変えよう。誰もが自分の良心の促しにしたがって生きていこうとする、そういうことである。私たち一人一人のそういう思いが地球規模の難民問題を解決する力となるのだ。

人口の過半数を大きく上回るくらいの人々が同じ思いを抱くようになるには、相当時間がかかるかもしれない。極めて単純素朴なことであるが、今述べたようなことに気付いた人間が周りにその思いを伝えていく、そしてそれぞれの持ち場でできることをしていこうとする、それだけでよいのだ。そして、その思いが熱ければ、共鳴する人々の広がりも加速度的に早まるのではと思っている。要は、私たちの思いである、どれだけ熱いかである。

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